半券はロルバーンに貼っておく

俳優オタクで舞台オタク

2022年 Next to Normal感想ノート(1, 1幕の各曲感想)

 

2022年 Next to Normal、無事完走、お疲れさまでした!
コロナ禍の影響で、他のカンパニーで中止、中断などが相次ぐ中、1か月強の公演期間で1度も止まることなく2チームとも完走されたこと、本当に奇跡といってよいと思います。
この作品は、今やる意義、意味があったミュージカルだったと実感しています。

もともとは推しが出る!!しかも海宝先生とWキャスト!!見るしかないぞ!?!?という気持ちでチケットを取っていましたが、結果としてこの作品自体の持つ力やメッセージに圧倒され続けることになった1か月となりました。
いまだにつかめていない部分もありますが、一旦このあたりで頭を整理させないと、いつかくるであろう再演のときに「私前回どう考えてたっけ?」が絶対発生すると思うので、備忘録的なものも兼ねますが、感想をここに記しておきたいと思います。

 

こちらの記事では1幕の感想のみ記載しています。

2幕はこちらです。どちらもとても長いのでご注意ください・・・

mariasashowmustgoon.hatenablog.com

 

※キャスト感想の記事も出来次第追記します。

 

正直ネタバレなしで書ける気が一切しないので、
(↓初日の私のツイート)

以下はすべてネタバレを含んでいます。閲覧注意!

もしまだ見ぬ再演を見る予定の方がこの記事に行き当たっていたら、ブラウザバック推奨です!!!

 

ネタバレ回避のためのワンクッション

www.tohostage.com

 

あらすじ

母、息子、娘、父親。普通に見える4人家族の朝の風景。

ダイアナの不自然な言動に、夫のダンは優しく愛情をもって接する。息子のゲイブとダイアナの会話は、ダンやナタリーの耳には届いていないように見える。ダイアナは長年、双極性障害を患っていた。娘のナタリーは親に反抗的で、クラスメートのヘンリーには家庭の悩みを打ち明けていた。

益々症状が悪化するダイアナのために、夫のダンは主治医を替えることにする。新任のドクター・マッデンはダイアナの病に寄り添い治療を進めていくが・・・。

(https://www.tohostage.com/ntn/より)

 

※注意

当方は甲斐翔真くんのオタクのため、感想がどうしてもそのあたり中心になります。また、Nチーム(望海さんチーム)は複数回、Aチームは愛知での大千秋楽を1回観たかたちなので、ほとんどがNチームの感想になるかと思います。しかしせっかく両チーム見れたので、各キャストの感想も別途まとめる予定です。

 

 

 

感想の前に、観劇前~初日の思い出

Next to Normalが再演されると聞いた際、周りのすすめもあり、絶対にネタバレを踏まないぞ!!と思った矢先に、あらすじだけだと思っていたどこかの記事で「ゲイブ」がダイアナにだけ見えている存在であることを知ってしまい、やらかした・・・と思っていました。その後は公式のページもできるだけ見ず、聞かず、それ以上のネタバレを踏むことなく初日を迎えることとなりました。

上記のネタバレで、ゲイブがとんでもなくキーパーソンになるということがわかっていたので、甲斐翔真のオタクとしては覚悟を決めなければ・・・という意識で臨みました。

すでに彼のクリスマスコンサートでI’m Aliveを聞いていたので、曲の予習はできているぞ!と思っていました。が。

甘かった・・・

とんでもないものを見てしまった気持ちでした。

 

1幕が終わった時点での疲労感が、既に2時間半みたくらいの重さ、6人しか出ていないのにこの情報量の多さはなんだ。曲も多いし、曲の中の歌詞も多い、ストーリーも重くのしかかり、体がびりびりする、そんな感覚を覚えました。ストーリーに対して音楽が軽快なストリングスメインであることが本当に救いでした。正直、ストレートプレイでみていたら私は耐えられなかっただろうな、と何度も思いました。

初日のカーテンコールで、甲斐翔真くんが「今まで(稽古中)は人と目が合わなくて孤独だったけど、お客様の目に触れることで孤独ではなくなった」というお話をされていたのが印象的でした。きっと各キャラクターそれぞれの悩みを抱えながらのお稽古だったのでしょう。

初日を見終わったとき、ああ、この作品が好きだ、チケット死に物狂いで取っておいてよかった、としみじみ思いました。そしてそのまま、ネタバレ回避のために買っていなかったサントラを買いました。公演期間のQOLめちゃくちゃ上がりました。皆様もぜひ・・・iTunesとかにもあります。

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というわけで本題ですが、せっかくなので、全曲の感想を書いていきます。Mの番号は便宜上サントラがある曲に付けています。

 

1幕

M1, Just Another Day

 舞台はグッドマン家のダイニング、大きなテーブルと4つの椅子、その一つに座って本を読んでいるダイアナ。ゲイブは朝帰りをして「待ってたの?」とダイアナに聞く。あまり素行のよくない息子を心配する母、という印象です。特に甲斐ゲイブは、バッグと鍵をテーブルに投げたりするし、もうすぐ18歳だ、というのがしっくりきます。いたずらっ子っぽい表情はするけれど、The 反抗期というわけでもなく、「ママのことは好きだけど過保護なのにはうんざり」というイメージでした。
 望海ダイアナと渡辺ダン、とてもお似合いで仲の良い夫婦、というイメージではじまるので、このあとが結構しんどくなります。笑 ナタリーに「お父さんとセックスしてくる」と言うダイアナのセリフ、気持ち悪さを感じましたね・・・ナタリーの「こんなときどう受け止める?」という歌から、割と頻繁にあることのように感じました。フォロワーとこの話をしたとき「これ児童虐待にあたるよ」と言っていたのがいまだに尾を引いております・・・
 そしてゲイブの「For Just Another Day♪」の第一声でやられます・・・それにナタリーの歌声もあわさるので、クリエの天井落ちるんちゃうか・・・と思いました。ミュージカル見に来た!という気分になれるのでこういうシーンが大好きです。
 家族全員のハモリが美しく、でも畳みかけるような歌い方にぐらぐらする、そんなシーンです。ダイアナがパンを床に並べ出すのを優しくとめようとする渡辺ダン、ドアのところで腕組み後方彼氏している甲斐ゲイブ、母の行動をこわごわと見つめる屋比久ナタリー・・・曲の終わり方も不穏です。(ここでゲイブの分のサンドイッチもダイアナは作っているのですが、持っていかれていないことに気づいて少し首をかしげるようなしぐさを見て、うぉ…となりました)

 

M2, Everything Else

 ピアノソナタのレッスンをしながらナタリーが歌う曲ですが、彼女の悲痛な叫びにひりひりします。「パラノイドな両親」と彼女がいうように、ナタリーにとってはダイアナだけが問題ではなく、ダンもその問題の一つだったのでしょう。普段の生活がクレイジーだから、調和がとれているクラシックを弾く。それが彼女の救いだったんだなと思います。そこに入ってくる、後々彼女の救いとなってくれるヘンリー・・・「ヘンリー!」「・・・ナタリー」「知ってる!」「なんか気持ち悪い」このやり取りがかわいくてしょうがない!!ちょうどいい距離感でいてくれるヘンリーにナタリーも心を許したのかな、と思います。

 

M3, Who Is Crazy/My Psychopharmacologist and I

 このシーンめちゃくちゃ好きでした!最後まで正しい歌詞の聞き取りができなかった気がするけど・・・笑 コーラス隊の振付、とても小㞍さん!!*1って感じでした。操り人形みたいな動きも不穏でよかったです。Nチームだと屋比久ナタリー、大久保ヘンリー、渡辺ダン、甲斐ゲイブの身長がきれいに階段になっていたのが、さらに作り物っぽくて好きでした。「どれが私のお気に入り?」部分でSound of MusicのMy Favorite Thingsのオマージュも入っていてミュオタは楽しかったです。薬の名前や副作用が軽妙に並べられているのが絶妙なバランス感覚でした。副作用の順番が全く覚えられなくて大変でした・・・
 性欲がないのは薬のせい、じきによくなるとドクターに言われ、「どうも御親切に、でも、車で夫が待っているんです」と、あたかも誘惑されたのを断るかのように返すダイアナのセリフがとても気持ち悪くて、好きでした。
 ダイアナの治療がうまくいっていないこと、ダンがそれに対して「自分も耐えている」と感じていることがあらわされていて、実際は重たい問題がずっとのしかかっていることがわかる曲です。

 

M4, Perfect for You

 大久保ヘンリーが好きすぎます・・・もうなんか、絶対ナタリーのこと大切にしてくれるじゃん、と思うばかりです。君にとっての「パーフェクト」になる、こんな素敵な告白聞いたことないな、としみじみ思います。大久保君のインスタライブ(兵庫公演終わり)で「Perfect for Youを翔真に歌ってほしい」と言っていたのを聞いて、「わたしも!!!!!!」と叫びました。推しに歌ってほしい曲が増えました。
 家の2階からその様子をみているダイアナとゲイブ、ダイアナはナタリーを見て何かショックを受けたような表情をしているんですよね、いつも思っていたのですが、この表情が謎でした。娘に彼氏ができたことがショックだったのか・・・?
 ダイアナがダンにプロポーズされたときの思い出と、ナタリーとヘンリーのやり取りがかぶる、「こんなの「狂ってる!」」「「それでもいいんだ」」というセリフがとても好きでした。狂っていてもよい、その末路が今のダイアナとダンなので、ナタリーとヘンリーはどうなってしまうのか、とも考えてしまいますね。
 この後でナタリーが家に戻って階段をかけあがるとき、屋比久ナタリーはうれしくて、にやけてしまうのをこらえるように唇をかんでいるのがめちゃくちゃかわいかったです。昆ナタリーはこらえられずにニヤニヤしていたように見えたのでそれもキュンとしました。

 

M5, I Miss the Mountains

 「懐かしい、生きていた日々」とダイアナが歌うこの曲、今はまるで生きている実感がないような言い方です。「山」というのも生きる実感、感覚が研ぎ澄まされることを概念的に表しているのかな、と思いました。
 穏やかで痛みさえない、文字として聞くと良いことのように思いますが、その痛みや感覚こそ生の実感で、それを忘れさせてしまう薬を捨てるという行為はダイアナにとって生きる術だったのでしょう。治療を続けても、やめても、死のリスクはある。そんな状況下で薬を捨てることで退路を断ち、ゲイブが「勇気があるね、捨てるべきだよ」とダイアナに声をかける。「お父さんはどう思うかしら」「なにも?気づかないさ」というセリフから、ダンが「治療内容」については無関心だった(のか、そこまで考慮できなかったのかは不明ですが)ことがわかります。
 あとこれはオタクの戯言ですが、ゴミ箱を抱える甲斐ゲイブ、さながらフットボール選手でした。(エアアメフトをする甲斐ホーマー*2を思い出すオタク)

 

M6, It's Gonna Be Good

 めちゃくちゃ明るい曲でパーン!と出る渡辺ダンの「It's Gonna Be Good♪」でいつもちょっとびっくりしてました。ダイアナが普段半月でさえ安定していることがないのか、とも思ってしまいます。妻とのセックス毎回最高らしいですが、それを取り立てるダンもちょっとアレなんですよね・・・このコーラスは子供組がやっていると大久保くんインライで明らかになったんですが、「F●ckin’ Play♪」っていうコーラスを子供たち(ゲイブ、ナタリー、ヘンリー)がやっているの最高に気持ち悪いですね(褒めてる)
 ヘンリーがグッドマン家にきてから、甲斐ゲイブの「ここにいるふり」がすさまじい。ダンがダイアナとナタリーの肩を抱いた、その横からにょきっと出てきてヘンリーに手を振ったり、ダイアナの作った料理を見て喜んだり、ダイニングに座って話しているふりをしたり、コップを持たないのに乾杯するふりをしたり、「誰かさんの誕生日よ」といわれてダイアナのところに行ってケーキをつまみぐいしようとしたり、「いないわ」とナタリーが言うまで、徹底的にそこにいるふりをするのが恐ろしくも切なかったです。

 

M7, He's Not Here

 ダンが息子はもう死んでしまって、いないのだとダイアナに訴えかける、そして観客に対しても種明かしをするような曲ですが、ここのダイアナの「そんなわけないでしょ、いるじゃない」といった表情も、ゲイブがさみしそうにダンをみつめるのも、ものすごくしんどい。しかしこのあとに「お二人に会えてよかったです」といえるヘンリー、いい子過ぎるしよくできた人間過ぎませんか???彼氏にしたい・・・

 

M8, You Don't Know

 望海ダイアナの爆発力がすさまじくて毎回体がびりびりしていました。椅子を倒したりひいたり、皿やカトラリーをなげたり、ダンは普段からこうやって癇癪を起こすダイアナをなだめてきたのか・・・と思ってしまうようなシーン。
 ダイアナがどんなものを抱えながら生きているのか、もちろんしっかりとわかるわけではないですが、感覚として「叫んでいるのに声が出てない、落ちているけれど地面が来ない」などの言葉で伝わってくるものがあります。個人的に、具合が悪い時に見る夢みたいだ、と思ったのですが、それを恒常的に感じているダイアナの苦悩を、ただ見ている、見守っている(治療内容についてはあまり理解していない)夫がわかるはずない、そう思ってしまうことも必然だと感じました。

 

M9, I Am the One

 前の曲で「あなたにはわからない」と突き放されてしまうダンですが、ダイアナと寄り添って治療にのぞんできた、ずっと一緒にいたのは自分だ、だから救えるのは自分だけだ、と述べる曲ですが、この途中から入ってくるゲイブが、とんでもなくかっこいいんですよ、余裕もあるし。(東京ラストから甲斐ゲイブが始めた「Heyパパ僕さ」で薬棚に肘おいているの余裕の表情過ぎて最高でしたね・・・)ここではダイアナはゲイブにすがっている、すがりたくなるんでしょうね。ダイアナの理想がゲイブに投影されていることをしっかり認識できるシーンだと思います。ここの両ゲイブ、ダイアナへの迫り方がまたちがうのですが(甲斐ゲイブは両手を握って目を合わせる、海宝ゲイブは手を頬にあてる)、どっちも甘やかでたまらないです。
 観劇前にトニー賞の動画で観たことがあった場面でしたが、その時からこの親子のべったり度というか、共依存感を覚えていたのですが、ネタバレ後に見るとまた味わいが違いました。Nチーム大楽での甲斐ゲイブの望海ダイアナの抱きしめ方がまるでキスシーンの前のように見えてびっくりしました。恋人みたいでした・・・

 

M10, Superboy and the Invisible Girl

 私が家で歌ってる率が異常に高い曲です。笑 リズム感が心地よいんですよね。一方、もうすでに死んでしまった兄にばかり意識を取られている母に対するナタリーのつらい心情がここで爆発していて、それに対して母が「あなたは誇りよPerfect Plan」と言うんですよね。英語原文だと「愛しているのよ」が「I love you as much as I can(できる限り愛している)」となっているんですが、その歌詞を知ったときにダイアナお前・・・!!!という気持ちになりました。ナタリーを愛することが「できない部分」、それはダイアナがゲイブに割り当てている愛情なのでしょう。
 兄は恋人、ヒーロー、プリンス、そして不死身で消えない、母の中にずっと生きている、それをナタリーは実感していた。そして実際「恋人、ヒーロー、プリンス」感満載の甲斐ゲイブ。ナタリーへのマウントを取るかのような激しいコーラスが印象的でした。あと甲斐ゲイブが柱に来るまでの助走が毎回伸びてたのが面白かったです。大楽はほぼ助走だった。

 

M11, I'm Alive

 毎回ゲイブ固定オペラグラスしておりました・・・甲斐翔真くんのクリスマスコンサートで聞いていたのと歌詞が違い、初日はびっくりしました。甲斐ゲイブのぬるぬる動く感じも、弾みをつけて動く感じもたまらなくて・・・縦横無尽にかけまわって「生きている!!!」というのをアピールし、ダンやナタリーに対しても自分がいつもそばにいるのだと、訴えるゲイブ、激しくて強くてかっこよくて大好きでした。
 あのシーンはダイアナの脳内でゲイブが暴れまわっているようにもみえますが、グッドマン家にとりついた亡霊のようにも見えます。ナタリーが母の薬を取り出して飲むのをあおるような甲斐ゲイブ、回を重ねるごとに屋比久ナタリーへの距離が近づいて行って恐怖でした。
 甲斐ゲイブはNo, No, No!で下に降りてきてダイアナに直接近づいて訴えるような感じでしたが、海宝ゲイブは2階からダイアナをそそのかすようなそんな印象がありました。甲斐ゲイブが梯子の3段目に飛び乗ってプラス2歩で2階に上るの、足の長さバグか???と思いました。ラストもダイアナに伸ばした手が長くて、もしかして大楽で届くんじゃないかと思いました。届かなかったです。

 

M12, Make Up Your Mind / Catch Me I'm Falling

 催眠療法に「かからない!」って言っているダイアナがかわいかったです。特に安蘭ダイアナは少女感強くてキュートにやってましたね、望海ダイアナはどっちかというといたずらっ子な感じです。(この辺りも甲斐ゲイブとのリンクがありますね・・・)
 ここのナタリーとヘンリーの話をするんですが、ヘンリーがナタリーに渡すのはピンクのガーベラなんですよね。当方繭期*3のオタクなのですぐに花言葉の話をしてしまうんですが、ガーベラの花言葉は「希望」で、ピンクのガーベラの場合は「思いやり」「崇高な愛」といったものもあります。ヘンリーがこのときナタリーに渡したのは希望であり、思いやりであり、愛なんですよね。リサイタルで混乱してしまったナタリーを救ったのもの、彼の思いやりと愛・・・ヘンリーが救い・・・
 ゲイブの高音コーラスが美しく響く一方、鬱と不安から抜け出せずに落ちてゆく感覚を覚えているダイアナは、ゲイブの部屋を片付ける決意をします。この時の甲斐ゲイブの驚きの表情、と去っていくときの落胆、切ないです。

 

M13, I Dreamed A Dance

 びっくりするほどかっこいいゲイブ!!!!白タキシードがびっくりするほどかっこよくて初日息をのみました。ダンスの型が貴族なんですよね甲斐ゲイブ。ここ海宝ゲイブだとなんとなく「プロムに来た息子」って感じなのですが、甲斐ゲイブはプリンスです。なんなら伯爵です。(フェルセン・・・)ダイアナに手を差し伸べるときに左手を背中に添えているのが、めちゃくちゃ貴族で大好きでした。あなたの踊りは素晴らしかった覚えがあるよ!!!*4
 ダイアナによりそったときの幸せそうな表情から、「独りぼっちね」と言われた後に表情を消して背中を向けるのがあまりに美しい動作で、この世のものじゃないみたいだ、と思いました。実際ゲイブはこの世のものではないのですが・・・

 

M14, There's a World

 あれ、ゲイブ、トート閣下か???甲斐翔真、ルドルフの前にトート閣下だったんか???
 ダイアナに寄り添い優しく死にいざなうゲイブ、完全に「エリザベート泣かないで」のトート閣下でした。切ない表情でシシィに寄り添っていた古川トートを思い出しました。
 こんなに甘くて優しい死が目の前にあって、それまで生きている実感さえなくなってしまっていたダイアナがそれを拒めるなんてことがあるのだろうか。
 甲斐ゲイブ、東京前半では優しく甘やかに笑いながらこの曲を歌っていたのですが、東京最終週からは、笑うのではなくダイアナに同調するようにさみしげな表情をうかべていました。また左手を優しくひっくり返す動作も、海宝ゲイブの場合右手だったのでびっくりしました。甲斐ゲイブは直接手を下すタイプで、海宝ゲイブは剃刀を右手に持たせたという感じでしょうか・・・

 

M15, I've Been

 血の付いた雑巾に気づいたのが2回目の観劇の時で、その時やっとダイアナがあの椅子の上で自傷行為をしたのか、と気づきました。ドクターとの会話で、ダンは取り乱すことなく対応していましたが、実際のところダイアナを失うことの恐怖と戦っていたのだなと思います。「一人を知らない、一人にするなよ」と、言い方の傲慢さはありますが、ダンの弱さはここにあるのだなと思います。

 

M16, Didn't I See This Movie?

 とっても楽しそうな甲斐ゲイブ!ダイアナがストレッチャーを叩いて「私のどこがおかしいの?!」と言ったときの驚いた表情も、ダイアナと呼吸を合わせてノリノリで動く甲斐ゲイブのいたずらっ子の表情もたまりませんでした。ストレッチャーを押すときに顎で「いっちゃえ!!」みたいなかんじでダイアナに指図する甲斐ゲイブがすごく好きです。Nチームの大楽で望海さんが「心に少年を飼っている」というお話をされていたのですが、このシーンはその少年が暴れていたのかなとも思います。それが甲斐ゲイブのやんちゃ感と合わさって、いたずらっ子が駄々をこねているようにも見えるシーンです。

 

M17, A Light in the Dark

 決意をしたダンと、その決意を感じて受けいれるダイアナ。愛があるからこその決心ですが、その背後にいるゲイブの瞳から光が落ちるので、否が応でも「光」という存在の尊さを感じる曲です。2幕ラストでもLightという曲が出てきますが、この曲の「Light」はあくまでも本当に灯したくらいの小さな光、どうしようもない闇から抜け出すためにつかむ小さな光を意味しているのだと思います。が、ダイアナにとっての光はそれまでゲイブだったわけですから、その光を捨てて別の光を掴もうとするさまは、ゲイブにとっては酷なことでしょう。(存在していないゲイブに使う言葉かどうかはちょっとわかりませんが)
 1幕ラストでダイアナが見つめているのは、ダンではなくゲイブだったように思います。

 

 

次の2幕感想に続きます。

*1:東宝・梅芸版ロミオ&ジュリエットの「死」のダンサーの振付をやられている小㞍健太さん

*2:ミュージカルOctoberSkyのホーマー・ヒッカム役

*3:TRUMPシリーズ、「Lilium」や「マリーゴールド」などの作品で花言葉への言及が多くみられる

*4:マリーアントワネットでのオルレアン公からフェルセンに投げかけられるセリフ